再生可能エネルギーは、導入量が増えるほど急激な出力変動が小さくなる

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再生可能エネルギーに関する五つの誤解 - 日経エレクトロニクス - Tech-On!

確かに、太陽光発電は太陽電池パネルごとで見る限り、天候や太陽の位置によって出力が変わります。風力発電も風車1基ごとに見る限り、出力が風まかせで、太陽光発電以上に大きく、そして激しく出力が変わります。これ自体は誤解ではありません。
 
しかし、いくつかの地域に分散した太陽電池、あるいは風車の発電出力を合計していくと、多くの場合、個々の変動が相殺して、タイムスケール(時間幅)が小さい急激な変動はどんどん小さくなります。導入量を増やせば増やすほど、そしてそれが広い地域に分散しているほど変動を相殺する効果が大きくなるのです。産業技術総合研究所はその様子を説明したWebページを設けています。この点は、意外に知られていないと感じます。
 
全設備容量/発電量の2割を風力発電が占めているスペインで、出力変動で電力系統が破たんしないのも、この変動の相殺によって、全体としては急激な出力変動が非常に小さくなっているためです。数時間以上のタイムスケールでは、出力変動は依然大きいですが、これは予測できさえすれば、十分な対処が可能で、実際にスペインではそれをやってのけています。その様子は、スペイン唯一の送配電会社Red Electrica Espana(REE)社が、半ばリアルタイムで公開しています。スペインの電力系統は、他の欧州諸国との連系線の容量が非常に小さいため、「他国との電力の融通ができない日本とは違う」とも言えません。

今だって分単位での需要側の変動には対応できている訳で、日照や風速などのデータで予測できる範疇に入るということでしょう。

元ネタはこちらですね。

産総研:太陽光発電研究センター 「出力変動と緩和策」

(1)比較的短い周期(数秒~数十分)の変動:
個々の太陽光発電所の出力は、雲の通過に合わせて変動します(図1)。このような短い周期の変動は、現在は設備の規模が小さいため問題になりませんが、現在の数十倍の設備規模になると、系統の調整能力を高める対策が必要なケースが考えられます。しかし系統全体で考えた場合、距離が離れたところにある発電所同士では、雲のかかるタイミングがずれるようになります。このためお互いが離れた場所にあれば、変動が打ち消し合って、全体的な変動が穏やかになってきます(図2)。これをならし効果と言います。この例ではたった20軒分ですが、実際には何十万、何百万軒分も足しあわされますので、全体の出力が十分に滑らかになると考えられます(図3)。このならし効果でも抑制できない変動分については、将来的にある程度の対策が必要になる可能性があります。
 
(2)比較的長い周期(数時間~数日)の変動:
 太陽光発電は需要の多い昼間だけに発電しますので、基本的には既存の電力需要内で消費することができます。このため時間帯による需給バランスの変化から見ますと、当面は大きな心配はないと考えられます。しかし今後普及が進んで、日本の設備量がたとえば今の数十倍の規模になりますと、需要の少ない日に昼間の電力が余る場合が出てきます。そのような場合が増えてくると、ある程度の蓄電設備が必要になると考えられます。

揚水発電だってあるしね。

じゃあ、太陽光発電の適正な導入規模はどれくらいなんでしょうか?

産総研:太陽光発電研究センター 「実環境における発電量」

日本に導入できる設備量は、潜在的に設置できる量だけで言うならば、日本の年間の電力需要量の数倍を発電できるほどの量が国内に置けます(図1)。従って太陽光発電の現実的な導入量は、面積よりも、電力需要との整合性やコストで決まるものと考えられます。太陽光発電の場合、昼間のピーク部分(ピークロード)の供給に用いるのが最も経済的と考えられます(*1)。日本のピークロードを賄うのに必要な設備量は、100~200GWp前後と考えられています(図1)。
 
たとえばこのうち50GWp分の設備を導入した場合、エネルギー供給面からは下記のような効果が期待できます。
 
・日本の年間電力需要量に対しては、約5%を供給できます。
 
・晴れた日なら、正午頃のピーク電力需要の最大約2~4割を供給できます。さらに他の発電所や送電網の負荷を減らし、全体的に送電損失を減らす(実質的に電力供給量を増やす)効果も期待できます。
 
・時間や天候によって出力が変動しますので、火力発電所の数自体は減らせません(負荷に完全に追従することはできません)。それでも火力発電の運転量を減らして、化石燃料の使用量を削減することができます(図2)。削減量は、原油換算で年間約7600万バレル、日本の原油輸入量の約5%と見積もられます(*2)。
 
・化石燃料の使用量削減に伴って、日本(2006年比)全体の排出量を約2.5%、事業用電力の年間排出量を約9.4%削減できます(*3)。これは日本の電力自体をその分低排出化できることを意味します。

なるほど。 で、今はどれくらいの導入量なんですかね?

日本の太陽光発電で半年で4.7GWが認定。過去20年以上の導入量に並ぶ - エネルギー - Tech-On!

2012年12月末までに認定を受けた再生可能エネルギーは計523.6万kW。うち太陽光発電システムは、470.4万kW(4.704GW)で、2012年3月末までに国内に導入された太陽光発電システムの累計量約480万kW(4.8GW)にほぼ並んだ。過去20年以上かかって導入された設備容量がわずか半年で認定されたことになる。
 
さらには、認定された太陽光発電システムの内訳は、住宅向けが84.7万kWだったのに対して、非住宅向けが385.7万kW。これまで日本では非住宅向けの太陽光発電システムが非常に少なかったが、2012年だけで住宅向けの累計導入量に迫る設備容量が認定された。

つーことは、2012年末時点で9.5GWということですね。
50GWpをとりあえずの目標とした場合に、まだ1/5しか達成していないということになります。 半年で5GWとしても、あと4年掛かる計算です。

需要側を調整する方法については、以下の記事が詳しいです。

日本式は高い 欧米の「省・蓄電池型」再生エネ導入に注目  :日本経済新聞

EUと米カリフォルニア州では、電力供給に占める再生可能エネルギーの比率が30%以上になることを想定しており、その多くを開発余地の大きい風力と太陽光発電に期待している。出力変動の大きい風力と太陽光を大量に導入しながら需給をバランスさせるには、風力と太陽光の出力変動を補うバックアップ用の電源と、風力が需要以上に発電した場合に電力を貯めておく何らかの「エネルギーストレージ(蓄エネルギー設備)」が必要になる。
 
こうしたバックアップ用電源は、「アンシラリー電源」と呼ばれ、通常、短期間で出力を変動させやすいガス火力や水力が使われる。エネルギーストレージには、揚水や大型蓄電池が有望とされてきた。(中略)
 
北米ではもともと、電力需給の逼迫が予想される日時の1日前に、大口需要家などに通知して需要を抑制してもらい、対価を支払うという「デマンドレスポンス(DR:需要応答)」が普及している。
 
こうした仕組みを風力や太陽光発電の連系可能量の増加にも活用する試みが出てきた。1日前に需要抑制を要請するのではなく、天気の変化に機敏に対応して、分レベルの事前要請で需要抑制を依頼する。こうなるとマニュアルで電気設備を操作していては間に合わないので、需要調整にはDRの自動化が必要になる。DR指令を受け取ると、あらかじめ設定したプログラムに従ってコンピューターが電気設備を自動的に制御し、迅速に電力需要を削減する。これを「高速ADR(Automated DR:自動DR)」と呼ぶ。(中略)
 
需要家機器の自動制御に関しては、米国では「OpenADR」と「SEP」、欧州では「EEBus」と「KNX」が標準規格として決まっている。OpenADRとEEBusは電力供給者から住宅への通信規格、SEPとKNXは家電通信の規格だ。こうした通信規格を使った需要制御の技術的な実証と電力市場と連携した制度づくりが着々と進んでいる。
 
日本では、風力発電や太陽光発電の増大に備え、蓄電池の設置を前提にコストの議論をしてきたが、欧米では蓄電池とアンシラリー電源を増設せずに、いかに大量の風力発電と太陽光発電を導入するかという視点で実証が進み、成果をあげつつある。

ところで産総研には、EPTについての見解もありました。

産総研:太陽光発電研究センター 「ペイバックタイムについての公式見解(H19.7)」

持続可能な社会を実現するために不可欠なクリーンで枯渇することのない再生可能エネルギーとして、太陽光発電への期待は近年益々高まっています。太陽光発電は、有害ガスやCO2の排出が無く、燃料代も掛からないクリーンな発電システムですが、製造時には一定量のエネルギーが必要で、それに伴うCO2の排出もあります。この投入エネルギーの回収と、製造時排出分のCO2削減に必要な時間は、それぞれ「エネルギーペイバックタイム(EPT)」「CO2ペイバックタイム(CO2PT)」と呼ばれ、これらがシステムの寿命に比べて十分短くなければなりません。(中略)
 
現在、我が国において公表されている最新の値(住宅用屋根設置の場合)は、EPTについては、多結晶シリコンで1.5年、アモルファスシリコンで1.1年、化合物薄膜(CIS)で0.9年、CO2PTについては、多結晶シリコンで2.4年、アモルファスシリコンで1.5年、化合物薄膜(CIS)で1.4年となっています(参考文献[2])。但し、結晶シリコンについて本計算では原料シリコンの製造方法として、現在開発中の新製法が想定されています。そこで現状に即した製造法から算出するとEPTは約2.0年、CO2PTは約2.7年となります(図1)。欧州では結晶シリコンで1.5~2.0年(将来0.8~0.9年)、薄膜系で1.2~1.3年(参考文献[3])、米国では多結晶シリコンで3.7年(将来2.1年)、薄膜系で3.0年(将来1.1年)[4]と見積もられています。

EPTの短さは、CIS系の優位性の一つですね。