なぜ小泉以降の首相にはリーダーシップがないのか

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田中均・日本総研国際戦略研究所理事長、政治を問う 「なぜ小泉以降の首相にはリーダーシップがないのか。官僚機構を信用し戦略を練らずして結果は作れない」|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

原子力発電所の事故は、当然のことながら国家安全保障に直結する。菅首相が犯した大きな間違いの1つは、東京電力や原子力保安院の情報を直接聞くことが必要と考え、あるいはこれらからの情報に信頼性がないと考えたときに、原子力学者から直接多くの意見を聞こうとしたところにある。
 
綿密な情報分析・評価を経ていない断片的情報を首相が聞き、行動することなどあってはならない。首相が判断の基礎にするのは、システムを通じて吟味された情報でなければならない。自分が直接乗り出すことが政治主導であり、政治家のリーダーシップだと考えたとすれば、国家統治の基本をないがしろにしたと言えるだろう。既存の機構が信頼できないと言うのであれば、菅首相は官邸の中に福島原子力発電所事故について情報をスクリーンし、評価するユニットを作るべきであった。

田中均氏は毎日新聞にもコラムを書いていて、国際政治における豊かな経験を元にした鋭い批評に感銘を受けます。

菅直人に関していえば、厚生大臣としては務まったけれども、総理大臣をやらせてみたら無能レベルだったということです。
でも、それを引きずり下ろす手段がないんですよね。

ところがさらに重大な問題は、民主党政権でよく練られた政策を作るシステムは失われ、統治体制の歪曲が起こっていることである。とりわけ3.11の大震災以降の菅首相は、行政の基本から甚だしく乖離し、ほとんど政権の私物化とも言えるような行動をとってきた。
 
行政機構は法に基づき権限や手続きが定められているにもかかわらず、一部権限を持たない者の示唆や提言を行政機構で吟味することなく、ほんとんど「思いつき」と受け止められても仕方のない政策発表を行なってきた。
 
エネルギー政策を所管する経済産業大臣に十分相談することなく、外遊先で唐突に1000万戸の家屋に太陽光パネルを設置する、あるいは脱原発依存を推し進めるといった声明を出すなど、内閣の長として守るべき行政の手続きを踏もうとしなかった。独自の発表をすることが政治主導であり、首相のリーダーシップの発揮であると思っていると言うことなのであろうか。
 
これらの根底には、「官僚や既成の機構を信用しない」と言う意識があるように見受けられる。内閣総理大臣は行政府の長であり、当然のことであるが、法に定められた組織や機構を活用する義務がある。もしこれらを信用しないと言うのなら、法案を提案し、新たな組織を作るべきであろう。
 
国家戦略局などの法案が国会で成立しないと見るや、「側近」と言われる国会議員や学者を重用し、手続きに基づかない形で政策形成をしようとするのは、政権の私物化以外何ものでもない。

菅直人は「歴史の評価」が大好きですが、史上最悪の総理大臣として名を残すのは間違いないと思います。