中国は「世界の工場」ではなくなりつつある

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品質低下という中国リスク - 産業機器・部材 - Tech-On!

ところが、先の通り、不良品が混入した状態で日本メーカーに納品されているというのです。導通してはならない電子部品同士が短絡してしまっている、ICピンがめくれて短絡してしまっている、ICピンが浮いて接触していない…。技術者ではなくても分かる不具合のレベルです。それ以前に、そもそも回路基板が汚れていて、「こんな状態で売り物になるのだろうか」と、日本メーカー製のきれいな回路基板を見慣れている身としては不安になりました。
 
当然、取材先の方はこの中国メーカーにクレームを付けました。取材先の方はこの中国メーカーの社長(総経理)と知り合いなので、直接社長に状況を伝えたそうです。驚くのは、その社長の反応です。「はあ…。とため息をつくだけなんですよ」と取材先の方。要は、社長自らが「お手上げです」と言っているというわけです。

国民性というのは、その国の製品に色濃く出るものです。
VWなどのドイツ車には、堅実で勤勉なドイツ人の性格がよく現れていますし、日本が時計産業でスイスを圧倒したのは、日本人の器用で正確性を重んじる性格があったからでしょう。

中国の工業製品といっても、大半は外国資本の合弁工場であり、中国特産というものはありません。 自己主張が激しく面子を重んじる中国人の特質って、あまり製品づくりにはプラスには働かないような気もします。
やはり中国人に似合うのは「商人」でしょうね。

なぜ、こうなってしまったのか。人材不足が深刻なのです。10年ほど前から中国は人材が無尽蔵と言われてきましたが、経済発展などとともに、工場の作業員で働きたいという若者は減っていきました。今では、巨大企業のEMS(電子機器受託生産サービス)でも作業員の確保に苦労していると聞きます。通常の中国メーカーではなおさらです。件の中国メーカーは大手ですが、社長のため息の裏には「人が集まらないので、鍛えようもない」という事情があるのです。なお、不良率が高まっているのは液晶パネルだけではありません。
 
人が集まらない。せっかく集まっても、定着しない。従って、なんとか熟練作業者に育成しても、他の工場に移ってしまう。その影響が、先のはんだ付けの熟練作業工程や検査工程に顕著に表れているというのです。
 
「世界の工場」のはずの中国工場が、人材不足という想定外の事態で品質低下というリスクが高まっている。品質低下に困った日本メーカーの中には、受け入れる場所、すなわち日本において検査工程を充実させて製品の品質を保持している企業もあるとのこと。中には、わざわざ検査のための工場を造る日本企業もあるというのです。

中国に工場が集まった最初の理由は、低コストで労働力が確保されるからでした。 明治時代の日本でも同じですが、繊維・衣料産業などから工業化は始まります。
iPhoneを作っている富士康(Foxconn)なんかも、作っているのはハイテクでも作業は単純で、作ったものの大半は輸出するという意味で、構図は全く同じですね。

そのうち中国人の所得も増えてきて、今度は中国の内需を狙って工場が作られます。
輸入が自由化されてない(関税が高い)とかの理由で、中国と合弁で工場を建てなきゃならないような業種で、今の自動車産業がそうですね。

でももう中国では「若者の工場離れ」が起き始めているように思います。 やっぱり「商人」気質の中国人には苦痛なんじゃないでしょうかね?